語学学習

「は」と「が」の使い分け:日本語学習者のための主題と主語の実践ガイド

POMODIARY チーム · · 7 分で読めます

日本語学習者のほとんどが、遅かれ早かれ同じ疑問にぶつかります。「は」はいつ使い、「が」はいつ使うのか? 教科書はよく「『は』は主題を、『が』は主語を表す」と答えます。間違いではありませんが、目の前の文を作ろうとしているときには、あまり役に立ちません。このガイドは、POMODIARYチームが学習者やその学習を支える人に向けてまとめたものです。違いをいくつかの実践的なルールに分け、それぞれに例文と意味の説明を添え、最後に学習者がよくする間違いを紹介します。

発音について一言。主題を表す助詞「は」は、「ha」のかなで書きますが、「wa」と発音します。学習者が最初に戸惑うポイントのひとつです。

核となる考え方を一文で

「は」は、これから何について話すのかを聞き手に伝えます。「が」は、具体的にどれが何をするのか、どれが何であるのかを指し示します。

「は」は舞台を整えるもの、「が」はスポットライトを当てるもの、と考えてみてください。以下のルールのほとんどは、このイメージから導かれます。

ルール1:「は」で主題を示し、それについて述べる

  • 私は学生です。 (自分について言えば)学生です。
  • 東京は大きいです。 東京について言えば、大きい。
  • この本は面白かった。 この本について言えば、面白かった。

「は」の前の部分が枠組みです。そのあとに続くものはすべて、その枠組みについての叙述です。主題は、文法上の主語である必要すらありません。

  • 象は鼻が長い。 象には長い鼻がある。直訳すると、象について言えば、鼻が長い。
  • 昨日は雨でした。 昨日は雨が降った。(昨日について言えば、雨だった。)

象の文が日本語の文法研究者の間で有名なのは、まさに2つの助詞を同時に示しているからです。「象」が主題で、「鼻」が「長い」の主語です。

ルール2:「が」は新しい情報、「は」はすでに知られている情報

何かが初めて会話に登場するときは、「が」を使うことがよくあります。いったん話題として定まると、「は」に切り替わります。

  • 昔々、おじいさんがいました。おじいさんは山に住んでいました。 昔、ひとりのおじいさんがいて、そのおじいさんは山に住んでいた。

このパターンは、日本の昔話にたくさん出てきます。最初に登場するときは、おじいさんが新しい情報なので「が」を使い、そのあとは主題になります。

日常会話でも同じです。

  • あ、猫がいる! (初めて気づいて)猫がいる!
  • その猫は誰の猫? (すでに話に出た)その猫は誰の猫なのか。

ルール3:疑問詞には「が」、その答えにも「が」

「誰」「何」「どれ」のような疑問詞は、主題になれません。主題とはすでにわかっているものだからです。疑問詞には「が」を使います。

  • 誰が来ましたか。 来たのは誰か。
  • 田中さんが来ました。 来たのは田中さんだ。

ここで「は」を使って答える(田中さんは来ました)と、不自然に聞こえるか、対比の意味が生まれます。「少なくとも田中さんは来たが、ほかの人は来なかった」というニュアンスです。

  • どれが一番安いですか。 いちばん安いのはどれか。
  • これが一番安いです。 いちばん安いのはこれだ。

ルール4:「が」で排他的に焦点を当てる(「〜なのはXだ」)

「が」はスポットライトを当てるので、「ほかの誰でもなくX」「ほかの何でもなくX」という意味になることがあります。

  • 私が払います。 (あなたではなく)払うのは私だ。
  • 私は払います。 (自分について言えば)払う。ほかの人は払わないかもしれない。

よくある場面は、誰が担当なのかを聞かれて「私が担当です」(担当なのは私です)と答える場合です。

ルール5:「は」で対比する

「は」は、はっきりと、あるいは暗に、あるものを別のものと対比できます。

  • 肉は食べますが、魚は食べません。 肉は食べるが、魚は食べない。
  • 日本語は話せます。 日本語なら話せる(ほかの言語は話せないかもしれない、という含み)。
  • 今日は暇です。 今日なら暇だ(ほかの日は暇ではない、という含み)。

否定文に「は」がよく現れるのはそのためです。「今日は行きません」は、「少なくとも今日は行かない」という含みを持ちます。

ルール6:従属節の中では「が」を使う

名詞を修飾する節や、大きな文の中に組み込まれた節では、主語にはふつう「は」ではなく「が」を使います。

  • 母が作った料理はおいしい。 (「母が」は「料理」を修飾する節の中の主語)
  • 雨が降ったら、行きません。 (「雨が」は条件節の中の主語)
  • 彼が来たとき、私は寝ていました。 (「彼が」は「〜とき」の節の中、「私は」は文全体の主題)

最後の例では、「彼」は「〜とき」の節の中にあるので「が」を使い、「私」は文全体の主題なので「は」を使っています。節の中に「は」を入れてしまう(彼は来たとき)のは、学習者の典型的な間違いです。

ルール7:特定の述語は対象に「が」をとる

一部の形容詞や動詞では、好きなもの、欲しいもの、わかるもの、できることの対象を「が」で表します。

  • 私は寿司が好きです。 (好きな対象は寿司)
  • 水が欲しい。 (欲しい対象は水)
  • 日本語がわかります。 (わかる対象は日本語)
  • ピアノが弾けます。 (できることの対象はピアノ)
  • 頭が痛い。 (痛いのは頭)

ここでは、ふつう「は」が人(主題)を、「が」が好み、欲求、能力の対象を表します。「好き」に「を」を使うのはよくある間違いです。「弾ける」のような可能動詞では「が」も「を」も耳にしますが、教科書の標準は「が」です。

まとめの表

状況助詞例
主題を示し、それについて述べるは私は会社員です。
新しいものを導入するが犬がいます。
すでに話に出たものについて話すはその犬は大きいです。
疑問詞とその答えが誰が来た? 山田さんが来た。
「〜なのはXだ」が私がやります。
対比は魚は食べません。
修飾節や条件節の中の主語が友達が書いた本
「好き」「欲しい」「わかる」、可能動詞の対象が猫が好きです。
気づいた自然現象を描写するが雨が降っている。

学習者によくある間違い

何にでも「は」を使う

「私は〜です」を最初に身につけた学習者は、すべての主語に「は」をつけがちです。「雨は降っています」と言うと、雨を何か別のものと対比しているように聞こえます。何かが起きていることにただ気づいたときは、「が」を使います。「雨が降っています」です。

疑問詞のあとに「は」を使う

「何は好きですか」は誤りです。「何が好きですか」を使います。

連体修飾節の中の「は」

「私は買った本」は、「自分が買った本」という意味にはなりません。正しくは「私が買った本」です。そのうえで主題を加えることができます。「私が買った本は高かった」(自分が買った本は高かった)。

「私は」の使いすぎ

日本語では、文脈から明らかな主語は省きます。すべての文で「私は」と言うと、堅苦しく、ときには自分本位に聞こえます。主題がいったん定まったら、省きましょう。私は学生です。大学で経済を勉強しています。

英語の「is」をそのまま訳そうとする

英語の「is」は、どちらの助詞にもそのまま対応しません。代わりに、自分は主題を設定しているのか、それとも特定のものを指し示しているのか、と考えるよう学習者に勧めましょう。

練習のしかた

ルールが直感になるのは、たくさん触れ、たくさん使ってからです。おすすめの練習を3つ紹介します。

  1. 助詞の穴埋めドリル。 読んだ文章から文を選び、「は」と「が」を消して、1日おいてから埋め戻します。答え合わせをして、間違えたところでは、どのルールを破ったのかを言葉にします。
  2. 短いお話を語り直す。 絵や短い場面を日本語で描写します。新しい登場人物は「が」で登場させ、そのあとは「は」で受けます。
  3. 自然な文章を読んで書き込む。 記事でも投稿でもかまいません。「は」と「が」すべてに印をつけ、それぞれがどのルールで説明できるかを考えます。

1つ目の練習にはタイピングが役立ちます。読み流さずに、毎回助詞を選ばざるをえないからです。FlowType.AI には、文の一部を隠す穴埋め(Cloze)モードがあり、助詞の選び方についてAIに説明を求めることもできます。実際の用例を見たい場合は、FlowType Grammar Lens でXの日本語の投稿を分解し、ネイティブがくだけた文章で「は」と「が」をどう使っているかを確かめられます。

最後のアドバイス

どちらの助詞も文法的に正しく、違いがニュアンスの問題にすぎない場合もあります。ネイティブスピーカーでさえ、自分がなぜそちらを選んだのか説明できないことがあります。でも、それで立ち止まる必要はありません。ここで紹介した7つのルールを当てはめれば、日常の文の大多数で正しく使えますし、残りの細かな違いは、読んだり聞いたりするうちに身についていきます。

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